萌えスロの歴史~なぜ人はパチスロに“萌え”を求めるようになったのか~後編

【5号機になり、萌えスロ全盛時代へ――】 『スーパーブラックジャック』のヒットによりパチスロ業界である程度の市民権を得ることとなった『萌えスロ』は、5号機になってからますますその勢いを増していきます。 パチスロ 新世紀エヴァンゲリオンパチスロ サクラ大戦

『エヴァンゲリオン』『サクラ大戦』シリーズなどのタイアップ機種が増えたのも、そんな傾向に拍車をかけることになりました。ちなみにエヴァンゲリオンシリーズは2014年現在で8機種(!)もリリースされています。 パチスロ ハーレムエース2パチスロ ツインエンジェルパチスロ マジカルハロウィン2  オリジナル作品でいえば、既に業界内において『萌えスロ』代表メーカーにもなっているNETからリリースされた『ハーレムエース』シリーズや、豪華声優を起用したことも話題になった、トリビーからリリースされた『ツインエンジェル』。以降大ヒットした『ツイン』シリーズと双璧をなすKPEの『マジカルハロウィン』シリーズなど、萌えスロであるがゆえに固定ファンの獲得を成功させたことは、余計に『萌えスロ』の市場価値を高めていったと言えるでしょう。  ここ数年でその傾向はより顕著になっており、放送終了からそれほど時間が経っていないような人気深夜アニメとのタイアップもの(『化物語』『まどか☆マギカ』)など、版権そのものが一定数のファンを抱えている作品をパチスロ化することによって、稼働開始前から話題作りにも困りませんし、パチスロに興味がない層にも手を出してもらえるという効果もあります。ただどうしてもあまりよくないイメージがついてしまう可能性もあり、諸刃の剣なのですが(笑)。

 しかしそれを加味しても、圧倒的にメリットが大きいというのが現状です。  たとえばエヴァンゲリオンシリーズなどは、パチンコ化によって莫大な利益を得て、結果テレビアニメ放送終了から長い時間が経っているにもかかわらず、新作映画を発表できるのは『パチンコマネー』のおかげとも言われていますし、これは私の体感などで実際のところはわかりませんが、パチスロがリリースされたアニメ作品は、暫くの間レンタルビデオ店などで貸出中となっていることが多いように思われます。パチスロで興味を持ってアニメを見てみようという層がそれなりにいるということですね。  逆にオリジナル作品が人気を得てメディア展開をした例もあります。

Rio rainbow gate! 『Rio』はパチスロオリジナル作品として初めてテレビアニメ化しましたし、『ツインエンジェル』もOVA化したのちにテレビアニメ化しました。他にも『麻雀物語』『南国育ち』はコミカライズされていて、遠くない未来にアニメ化もされるのではないでしょうか。  もはやパチスロはそれ単体ではなく、先にある色々な展開を見据えたものとして存在しているのかもしれません。 【付加価値ではなく、絶対的価値に】  少し話が逸れてしまいましたが、パチスロはもはやリールと出目で見せる時代から、映像や音声で魅せる時代へと変わったのだと思います。  遊技人口の多くが男性である以上、魅力的な女性キャラクターを求めるのは自然なことであり、勝ち負けというものを意識してどうしても殺伐としてしまいがちなホールにおける、気を紛らわすための一種の清涼剤としての価値があるのです。  リール制御や出目というものに拘り、それこそがパチスロというものにおける普遍的な価値であるという常識は、もはや通用しない時代になっています。 BGMは10年以上前から力を入れるものとして扱われてきましたが、それと同等なレベルで映像や音声にも価値を見出す現状です。それは勿論より遊戯としての質を高めることに他なりませんが、何より需要に応えるという形をとるからこそ、なのです。  以前紹介した『マイスロ(リンク)』に代表されるようなコンテンツが、現在では多くのメーカーの台に搭載されており、パチスロの新たな楽しみ方が確立されてきました。 『家スロ』という、実機を購入して自宅などでお金を使わずに遊ぶという楽しみ方が流行ってきているのも、コレクション要素の存在によるものなのでしょう。 【萌えスロは技術の発展を促すものなのか】 パチスロ シンデレラブレイド  近年の『萌えスロ』において大きな話題になったものがあります。 NETから2012年に発売された『シンデレラブレイド』は、パチスロと萌えの究極な融合を果たした台でした。 おしりペンペンタイム  通常のMAXベットボタンとストップボタンとは別に『おしりペンペンボタン』という完全に一つの目的のためだけに用意されたボタンがついており、その名の通り演出でキャラクターのおしりを叩くために使用します。ボタンを押す度に画面にはおしりを叩かれ痛がるキャラクターの絵と、ゲーム数の上乗せ(簡単に言うとメダルをたくさん出すチャンス)が表示されるのですが、これの面白いところがボタンの連打がガチンコの抽選になっているということなのです。  PUSH毎に継続率が設定されており、勿論長く叩けば叩くほどプレイヤーにとっては得することになりますから、気合が入りますよね。  しかもおしりペンペンを恥ずかしがってレバーで演出をキャンセルしてしまうと、小数点単位ではありますが損をしてしまうということが公表されており、半ば強制的におしりペンペンすることが求められているのです。ただの演出であれば飛ばしてしまうものでしょうが、出玉に直結するとなればそうもいきませんよね。

いかにも硬派な感じのお兄さんや、仕事帰りのサラリーマン、パチプロのような若者でさえおしりペンペンボタンを叩いているという画は、ホールにおいてはあまりにも新鮮なものでした。

人によっては「アホな発想だなぁ」となってしまうかもしれません。しかし私はそうは思いませんでした。

言ってみれば、新たな可能性を示してくれたのです。萌え要素をいかにアピールするかという試行錯誤が、結果的にパチスロそのものの技術を発展させることに繋がり、業界全体に対して可能性を示すこととなったという事実を見過ごすわけには行きません。

人々の『萌え』に対する探究心や向上心は、大したものだと思います。  遊技人口の減少が叫ばれている昨今のパチンコ・パチスロ業界にとって、救世主的な存在になりうるのが『萌え』なのです。  業界全体に対するマイナスイメージを払拭していくためにも、今後新たな可能性を示してくれるであろう『萌えスロ』に期待していきたいものですね。