藤川まゆさんインタビュー~後編~

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――今のお話の中で『こっとん』が出てきましたが、お店を持つに至った経緯などを教えていただけますか。 (※『こっとん』はかつて藤川さんが店長をされていたノーレートの麻雀店で、賭けない麻雀と食事を楽しめるというコンセプトのお店です。) お客さんとして麻雀を打ちに行っていた店があるんですけど、そこのオーナーさんがもう一つ雀荘を出したいという話をされていて、ちょうど私のことを気に入ってくれていたらしいんですよ。それで「よかったら、藤川さんにやってもらいたい」と言っていただいて。 いろいろ無理を言ったのですが、店の名前やコンセプトやルール、料金設定に至るまで私が主導となって決めさせてもらえたので、一から全てをやるという感じでした。

――今までにもどこかのお店で店長をしたことはあったんですか? 店長職をやるのは初めてだったので、バイトの面接をしたりっていうのも初めてでした。

――一気に世界が変わりそうですね。 うーん……上京してすぐの働いていた時期にも、それなりに責任のある立場で仕事をしていたので、「世界が変わった!」というほどの大きな変化みたいなものは感じませんでしたね。大変だな、とは思いましたが(笑)。

――難しいと思うようなこともありませんでしたか? 今でこそそうでもなかったんじゃないかと思えますけど、当時はやっぱり難しかった気がしますね。 例えばバイトの面接ですごくいい方が来ても、お店のコンセプトに合わなければ採用することができませんし。 後は営業時間から料金から、調布という街を考慮して決定しなくてはならなかったので、一から作るという難しさもありました。 それでも今までに色々な雀荘を見てきたので、それを参考にして相場も見つつ考えることはできたので、助かった部分もありますね。 とは言えこっとんのようなコンセプトのお店はそこまで多くありませんでしたから、参考にするにもあまりサンプルがとれないので、みんなとよく相談しながら考えていました。

こっとんでの藤川まゆさん

まーじゃん食堂こっとんでの藤川まゆさん

――それから多忙な日々が続いたと思いますが、実際やってみてどうでしたか? どんなお仕事でもそうだと思うんですけど、求めることが人によって全く違うじゃないですか。その全てに応えるのは難しいですし、できるだけ多くの方に満足してもらうためにどの意見を取り入れようかと考えるのは試行錯誤しますね。 後はもう純粋にオープンしたてだったので休みが全然とれなくて、そういう意味では大変でしたね。 結構疲れも溜まっていたみたいで、マッサージしてもらった時に体がボロボロだと言われました(笑)。

――肉体的なものは勿論あると思うんですが、精神的な部分での負担もかなりあったのではないでしょうか。 勿論お店をやらせていただくからには結果を出さなければいけないので、売上の面とかでのプレッシャーはありましたね。

――9月末でお店を閉めるということになったわけですが。 はい、オーナーが病気になってしまって。 雀荘って風営法なので手続きが面倒で、責任者にそういうことがあるとまた一から許可を取らなければいけないんですよ。

――その直後に表舞台からの引退をしたのは、何か関係はあったのですか? バクステに関しては少し前から辞めることを考えていて、何度かマネージャーさんに相談したりしていました。メジャーデビューするようになって、他のキャストの子や若干温度差のようなものを感じていたんですよ。私の場合はアイドル一本というわけではなく、麻雀プロもそうですし、他にも色々とやっていきたいと思っていたので、『アイドル一本でやっていこうという子とこのまま一緒にやっていていいのだろうか』と。後はお店をオープンすることが決まって忙しくなって、それがちょうど曲が一気に増えた時期だったので両立するのは難しいかなと思いまして。 一番はやっぱり温度差だったり、バクステのみんなやファンの方に対して申し訳ないなっていう気持ちがあって、中途半端な状態はよくないなと。 CDが出て曲を覚えなくてはいけないのに、こっとんの方が忙しくて全然覚えられなくて、なんとか頑張って覚えようという気力も、休みが全然なくて疲れていたこともあってあまり出てこなくて……。長い間精神的に張り詰めていたところもあったので、珍しく『疲れちゃったな』と思ったんですよね。それでちょっと人生を休みたいなと。この辺りで少し休憩する時期なんじゃないかと思って。 バクステのほうを辞めるのなら、麻雀に関してもって思ったんですよ。麻雀プロのゲストって、結局タレントみたいなものじゃないですか。お客さんを呼んでお客さんに来てもらって。やっぱりそれで呼べなかったら……っていう不安もありますし、人前に出るために自分を磨かなければっていうことも考えると、人前に出るのとそうじゃないのって精神的なプレッシャーが違うんですよね。 一旦人生を休憩しようって思った時期に、人前に出るプレッシャーはそれにあまりよくないのかもしれないと思ったんです。だからもしかしたらこっとんでの数ヶ月……休みなくやってきた時期がなければ、もしかしたらこういう結論にはなっていなかったかもしれないんですけど、全力で駆け抜けてみて、ちょっと疲れたかなという感じですね。

――ではもしかしたら今後また表に出て活動するという可能性というのもお有りでしょうか。 そうですね。実際ありがたいことに今でもちょっとした表に出るお仕事だったりとか、麻雀のお仕事だったりとか依頼はいただいてるんです。 プレッシャーも含め、受けられるものがあれば少しずつやらせていただきたいなとは思っているんですけど、それを本職にというかメインにしようとは今は思ってないですね。 あくまで別のお仕事があって、月1、2回程度、いい刺激をもらえるくらいのペースでやっていけたらなと。

――そういえばダイエットアドバイザーとしての資格を生かしたお仕事もされているそうですね。 はい、ロバミミというサイトのキキジョウズとして、電話相談員的なものをやっています。

――そもそもその資格を取得するに至った経緯はどんなものだったのですか? 元々資格をとるのが好きだったのと、高校の頃からダイエットや健康系に興味があって、色々とダイエットのことを調べたりしていたというのがきっかけでしたね。結構実用的な資格だと思ったので。 あとは、目に見えてお客さんに喜んでもらえるというか、「役に立ったな」と実感できやすいお仕事だと思ったので。

――資格をとるのが好きなのですね。 そうですね。資格をとるために勉強するというのが好きなんだと思います。明確な目標のために努力というか勉強をするのは好きですね。

――今後の目標について教えて下さい。 ライター的なお仕事や、アドバイザー的なお仕事もそうですが、昔からやりたいなと思っていたことを今いろいろ少しずつやっているんですけど、時間に余裕ができてきてそれをメインにがっつりやっていけるようになったので、そこでそれなりに成功したいなと。個人である程度成功できたら、最終的には会社にしたいです。できることなら20代のうちにしっかりと形にしたいですね。 後はこれは目標とはちょっと違うのかもしれないですけど、綺麗でいたいです。魅力的な、素敵な大人でいたいです。

――充分魅力的で素敵な女性だと思います。 ありがとうございます(笑)。 その「綺麗」とか「魅力的」というのは外見だけでなくて、中身に思う部分が大きいですね。 なんというか、余裕のある大人になりたいです。どんな場面や状況でも余裕を持っていられるような女性になりたいですね。

――では最後に、藤川さんのようにマルチな活動をしていきたいなと思っている方へアドバイスをお願いします。 なぜマルチな活動をしたいのかっていう理由にもよるんですけど、正直ある程度なんでもこなせる人っていうのは仕事になりづらいんですよ。 私はよくバクステで『安定のまゆプロ』って言われてたんです。例えば歌がすごく上手い子もいれば、あまり得意じゃない子もいる。トークが得意な子がいれば、そうじゃない子もる。 でも私の場合は特に苦手だっていうものがなくて、ある程度安定して無難にこなせるんですよ。 ただそれも良し悪しで、悪く言えば没個性なので、マルチに活動したいと思ったら、何か一つ自分の武器を見つけるべきですね。私の場合は麻雀やゲームがあってよかったんですけど。どんなことでもある程度ちょっとずつというのは芽が出づらいというか……。

――器用貧乏になってしまうと。 そうですね。器用貧乏で収まってしまう。器用貧乏からどうスーパープレイヤーになるかという話ですね。

――その場合は自分でしっかり絞って? 絞ってというか武器になるものを考えて、ですね。例えばダンスを特技に伸ばそうと思っても、既に何年もやっている子には敵わないじゃないですか。 だから私でいうところの麻雀、でしょうか。アイドルとしては珍しい個性だと思いますし、別に『昆虫が好き』でもいいと思います。それってすごく個性的なものですから。 無難なものを特技にしていくより、ちょっと変わったものを出していく。自分のそういうところを開拓してくというのが大事かもしれないですね。 とにかく最初はきっかけが大事ですから、まずは目に留まること。それで自分を売り出せるようになったらどんどん他のことも出していけばいいですし、最初からマルチにやろうというのは難しいので。自分をプロデュースする順番を間違わないように。自分をどう売っていくか、ですね。

――当然のことだとは思うんですけど、色々とやろうと思ったらその分努力しなくてはいけないことも増えますよね? そうですね。私はいわゆる二足のわらじでやっていたので、麻雀プロとしての努力とアイドルとしての努力をしていたわけですけど、でもマルチに活動したいと思っている人って、元々色々なことが好きで全部生かしたいからマルチに活動したいとなってなると思うんですよ。だから別に元から持っているものを伸ばそうというだけなので、苦にはならないんじゃないでしょうか。

――よろしかったら具体的に麻雀プロやアイドルになりたいという方へのアドバイスもいただけますか? 麻雀プロになりたいという相談をよく受けるのですが、毎回「ちゃんと就職して、ちゃんと仕事をしながら週末対局に参加した方がいいと思います」って言っています(笑)。麻雀プロは将棋や囲碁と違って、プロというけで食べていける職業ではないので、ちゃんとした生活の基盤があった上でプロ活動をするのがいいと思います。 大会で優勝したとしても賞金だけでは生きられませんし……執筆やテレビ出演などの仕事が貰えれば話は違いますが、それで生活できるのはほんのひと握りの方ですし、多くのプロは雀荘でバイトしたり社員として働いたりしているので、決して楽な道ではないと思います。 女性は若いうちはゲストの仕事をたくさん貰えたりしますが、いつまでもそうあり続けられる保証はありませんし……男性は更にきついんじゃないかと思います。

――なんとも悲しい現実ですね……。アイドルを目指す方へもお願いします。 自分をよく研究することだと思います。まあ私も苦手なんですけど(笑)。 写真を撮られる時とか、どんな角度や表情だとより綺麗に写ることができるのか、とか。 アイドルって今多様化していて、可愛いだけじゃなかったりしますよね。だからやっぱり自分の武器を見つけることでしょうか。 結構コンプレックスって誰でも抱えていると思うんですけど、それって武器になったりもするんです。客観的に見て個性だと思うところがあればそこを伸ばすのも大事だと思います。 後はたくさんいるアイドルの中でいかにハングリー精神を出していけるか。ただ与えられたものをこなしていくだけではなく、自分の売り方をいろんなものを使ったりして自分で考えてみたり。 後は簡単に諦めないこと。すぐに名前が売れて人気が出るなんてほぼありえないことですから、何年も継続的に努力をしていくだけの根気を持ち続けないといけないでしょうね。

――待っているだけではだめだと。 それは勿論そうですね。相当可愛いとか相当何か突出した魅力があればそれでもいいのかもしれませんけど、今ってアイドルが溢れていますから。 その代わり本当にルックスがいいとかではなくても、何か個性があれば売っていける時代なので。そういう自分なりの武器を探していくことが大事だと思います。

――なるほど。本日は長いことお付き合いいただきありがとうございました! いつか僕にも麻雀を教えて下さい。

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率直な感想として「力強いな」という印象を与えられました。それは話し方であったり、眼力であったりもそうなのですが、何よりも意志の強さ。厳しい世界で揉まれてきた人間であることがひしひしと伝わってきました。 麻雀プロとアイドルという、一般的にはあまりイメージが結びつかない組み合わせですが、だからこそ藤川さんのような方にはぴったりとはまるのでしょうね。 表舞台での露出はあまりないとのことですが、完全に引退するというわけではないそうなので、皆さんも是非この機会に藤川まゆさんのことを知って、興味を持っていただけたらなと思います。 藤川まゆさん、どうもありがとうございました!