お笑い芸人『そうじゃねえだろ』さんインタビュー~中編~

こんばんは!麻井のんです。 今回は『そうじゃねえだろ』さんインタビューの中編です! 今回もとってもボリュームたっぷりで、お二人のお笑い熱がたくさん伝わってきます! ———————————————–

-「芸人になるために努力したことってありますか?」 仁木「とりあえずは『クラスの奴らを笑わせなきゃ』って思いましたね。でも今思い出すと、めちゃめちゃ嫌になるくらいイタかったなって思うんですけど、本当に惜しげもなく笑いを取りにいってたなっていう感じでした(笑)僕、田舎で育ったんで、全校で150人くらいの学校だったんです。で、その中にちょっと斜に構えた奴がいたら、笑い取りにいけなかったかもなって思うんで、そういう意味では存分に笑い取りにいかせてくれる奴らでよかったですね(笑)とりあえず“学校の中では面白い”ってなったと思うので、そういう自信も大事だと思います」

-「笑いに対して自信をつけたんですね。最近の努力はなにかありますか?」 仁木「最近で言うと、僕らネタライブとかあんまり出てなくて、記事とかをやらせてもらってるんですけど、他の芸人さんからしたら『あいつら本当に芸人なのか?』みたいな感じもあるかと思うんですよ。ネタじゃなく記事みたいな。なので、ネタの方ももちろん手を抜かず、説得力をつけたいというか、ネタも記事もどっちも手を抜かずにやっていってます。どっちかをおろそかにしてしまうと、その時点で『やっぱりな』って思われてしまうと思うますし、悔しいので」

-「西山さんはありますか?」 西山「芸人になろうってなると、『じゃあまずはネタ書かなきゃいけない』っていうスタート段階にあるじゃないですか。そこで『ネタ書くからじゃあネタ見てこよう』ってなる人が多いんですけど、俺はお笑いがめちゃくちゃ好きだったから、今までM-1とかオンバトとかエンタの神様とか笑金とかいろいろなネタを見てきていて、もうすでに脳に何千本もあったんですよね。“研究材料として”じゃなく、何年分もの土台があったんです」

-「“脳に何千本ものネタってすごいですね!」 西山「あと、家が夜21時以降TV見ちゃいけないっていう決まりがあって。でも、面白いTVって21以降やってるじゃないですか。『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで』とか、どうしても見たくて。で、学校の技術の授業でラジオを作っていじってたら、日テレとNHKだけ聴けることに気付いたんです。それからは21時に『おやすみなさい』って自分の部屋に入って、布団の中で手回しして、最小の音量でガキ使の笑ってはいけないを聞いて。もちろん画面がないから『松本、アウトー』って言われても、何が行われてるのか想像しなきゃいけないじゃないですか(笑)これ、今考えると、音声だけでどういうことが行われているのかを想像することを、知らず知らずのうちに訓練してたんだなーって。気付いたら小学校の頃からすでにネタ帳とかは持ち歩いてたし、18歳で養成所入ったとはいえ、結局俺が今までしてきたことの延長だなって。“今どうしたらいいのか”っていうのを考えるか、っていう違いだけだなって」

-「笑いに関することは既に培われていたんですね。最近の努力はどうですか?」

西山「努力っていう点で考えると、“人と会うこと”ですかね。人と会うのが苦手だったから……(笑)ラジオでネタ聞くとかは苦痛じゃなかったので、自分にとっては努力じゃないんです。でもいったん人と会ってみるとかは、自分の中ではエネルギーを使いますから」

-「なるほど!じゃあ芸人になってみて、『これって必要なんだな』って認識したことってありますか?たとえば、“人と会うこと”は実際なってみてから必要だって気付いたわけじゃないですか。なる前は気付かなかった必要スキルというか、そういうものは他にあったりしますか?芸人になる人って、じゃあネタ見ようとか、面白い本を読もうとか、そういうのはあると思うんですけど、なってみないとわからないこともいっぱいあるじゃないですか。そういう人に『こういうことも必要だよ』とか、『こういうことに目を向けたらいいんじゃない?』とかあったら聞きたいです!」 仁木「うーん、なんですかね。本当にスタンダードな生活とか暮らしとか、イベントをとりあえずやってみるってことですかね。クリスマスとか。そういう日々の生活とかイベントをちゃんとやってみないと、話しのタネというか、そこでの“あるある”っていうものがわからないので。そこは意外と大事だなって思いました」

-「確かにあまり意識しませんでしたが、ネタを考える上では不可欠ですね!」 西山「スゴイ人の意見……例えば本とかインタビューとか観たりして、それに感銘は受けてもいいけど、決して影響はされないようにしないといけないなと思います。同じくらい尊敬してる人たちが全く真逆のことを言ってたりすることもあるじゃないですか。でもそれって、逆に言うと何やっても売れるんですよ。「これやったら売れる」じゃなく、「俺はこれやったから売れた」みたいな。悪口を言って売れる人もいれば、悪口を言わずに売れる人もいるじゃないですか。だから決して鵜呑みにせず、『じゃあ自分はどうなんだ?』って自分に落とし込むってのが大事だと思いますね」 仁木「意見を聞いたところで、そのやり方が、自分に合ってるか合ってないか、ですね。単純に意見に同意するじゃなく、『そういう考えあったんだ』や、『そういう考えをこういった出し方にするといやらしくないんだ』とか、やり方に感動とかはします。その“うまさ”とかに」 西山「あと参考にするのであれば、“天才じゃない人”を参考にした方がいいというか……。アンタッチャブルさんって、例えば『ファミレスの話をする』とか、5行ネタ帳に書いて、それについて5分喋ってれば、それが5分のネタになるらしいんですよ」

-「え!すごいですね!確かにそれは“天才”ですね……!」 西山「で、アンタッチャブルさん好きな人は、それやろうとして、5行分しか喋らないんですよ。それって、アンタッチャブルさんじゃないからであって、で、みんなアンタッチャブルじゃないんだから、それを鵜呑みにして同じことをしても駄目だと思うんです。『なるほど、こうやったらこんなに面白いんだ』じゃなくて、自分と向き合って、自分が面白くなる最短ルートというか……それを探さなきゃいけないと思うんです。でもたぶんみんな一番嫌だと思うんですよ、自分と向き合うのは」 仁木「めんどくさいしね(笑)」 西山「答えも出ないし、答えなんて死ぬまでわかんないと思うんで」

-「でもそれをやっていかなければいけない、と」 西山「そうですね。“天才”か、そうじゃなければ“自分とちゃんと向き合った人”が売れてるんだなって思います。やらなくても天才だったら売れるんだと思いますけど、俺は天才じゃないから自分と向き合っていかなきゃいけない」

-「実際芸人さんになってみて驚いたことや意外に感じたことってありますか?」 西山「意外と芸人やってる人ってお笑い好きじゃないんだなーって思いましたね。青森の田舎で育って、めっちゃお笑いが好きだったけど、永遠のテーマというか『友達ほしくて生きてる』みたいなところがあって(笑)芸人やって売れたいっていうのもあるけど、『養成所入ったら、もしかしたら毎日TVの話とか、ネタ関連の話ができるかも!』って思ってたんですよ。でもいざ18の時に養成所に行ったら、ネタ作りのためにネタを見る人はいても、自分みたいな“お笑いオタク”があんまりいないなって。だから笑わせる側と観てる側ってやっぱり違ったんだなって思いましたね」 仁木「上澄みだけすくってる人もいますからね。なまじ芸人って意外と形だけで名乗れちゃうものなので。先輩と話す上でも『兄さん』って言えば芸人っぽさが出ちゃうので、それゆえに考えがとどまっちゃう人もいると思いますし」

-「なるほど。いろんな仕事でも作り出す側と受け取る側は違ったりしますもんね。仁木さんはなにかありますか?」 仁木「僕は、稼げなさすぎるなって(笑)TVに出たり賞レースで優勝してもバイトしている人もいたりするので……」

-「そうなんですか!?それは大変な世界ですね……」 仁木「だから真っ当にというか、今までTVで見てた人たちのやり方でやったら100パー無理だなっていうのはありますね。殻を破ってというか、『芸人は舞台で』というか、そういうことを言い続けて食えないっていうのが一番間抜けだと思うので……。結局芸人を職にしたいと思うってことは、それで食えるってことだと思うので、食えてない時点で、『どうなの?』っていう。説得力がないなって」 西山「それならじゃあ正社員で給料もらって、定時であがれる職について、そこからコンビ組んでもいいわけだし」 仁木「せっかく芸人っていう職業はネタだけじゃなくいろんなことができる職業ですからね。面白いことやって有名になれば“芸人”って言えると思うので。できることをやらずに食えてないってなると、ちょっと他のいろんなことにも頭をまわした方がいいのかなって。まあ言うなら出てからちゃんと物言いたいってうのはあるんで、とりあえずはいろんなことやって食えた上で、『こういうやり方もあるんだ』ということを示したいですね」 西山「賞レースって、やっぱり人がつくったものじゃないですか。人がつくったものを全部信頼して、『これを信じてれば売れる』っていうのは他力本願だと思うんですよね。全部そうだと思うんです。たとえばTV番組とかも。人がつくったシステムに頼ってると、いつか終わるなって思ってます」

-「新しいことをやっていきたいっていうことですか?」 仁木「新しいことというか、自分で考えたゴールは見つけていきたいっていうのはありますね。R-1優勝がゴールとか、M-1優勝がゴールとかじゃなく。結局その賞レースが終わっちゃえば、もうそれは終わりになっちゃうじゃないですか」

-「プロ意識が高いんですね!」 西山「芸人って“偉ぶりやすい”職業だと思うんですよ。実際スポーツマンだったらトレーニングをしてない人は『トレーニングしてる』って言えないけど、『考えてるよ』って言っちゃえば勝ちなんですよ、芸人って。だからそんな中、ほんとに自分たちがスゴイと思う人に話を聞きたいし、面白い人に話を聞きたいし、面白い同期とライブをやりたいし。結局プロ意識高くてもつまらなかったら意味ないですし(笑)」 仁木「あと驚いたことといえば、“とがってない人”が多いって思いますね。例えばライブに一緒に出る人とかで、“この人が面白いか面白くないかの嗅ぎ分け”が必要だと思うんですよ。例えば芸人じゃなくても、飲みとかで“この人から話を聞くかどうか”、自分の中で排除するかどうか決めるじゃないですか。そういう“面白いか面白くないか”の自分の中での上から目線というか、そういう意味での“とがり”が必要だと思うんですよ。あらゆるものを全部受け入れてしまうと自分の意志っていうものが本当になくなってしまうというか、ただ先輩だからっていう理由で一緒にメシ行って、『はい、はい』って話を全部受け入れて聞くって、自分が本当に面白いと思ったものを突き詰めていく上で、すごく邪魔な瞬間じゃないかなって思いますね」 西山「まあ俺はその点で仁木とは違うのは、最終目標は“友達をつくること”なんで(笑)だから別に、仕事が関係なかったら面白い面白い関係なく、いい人だったら飲み行きたいなーとは思いますね(笑)」

——————————————– ということで、今回は、『そうじゃねえだろ』さんの芸人になるまで努力したことと、芸人としてやっていくために必要なこと、でした。 最終回である次回は、芸人として嬉しかったエピソードや、ネタの作り方などをお送りします!